家の周りで蜂の巣を見つけた時、「小さいからまだ大丈夫だろう」「今日は忙しいから、明日業者に電話しよう」。そんな風に、つい対応を先延ばしにしてしまうことはないでしょうか。しかし、蜂の巣対策において、その「一日」の放置が、後々のリスクを計り知れないほど増大させる危険な判断となり得ます。なぜ、たった一日が命取りになり得るのでしょうか。その理由は、蜂の巣の成長が、私たちの感覚とは全く異なる時間軸で進んでいるからです。まず、巣の物理的な大きさについてです。特にキイロスズメバチなどの成長が速い種類では、働き蜂が活発に活動している時期であれば、巣の直径が一日で1センチから2センチ大きくなることも珍しくありません。これは、体積で考えれば相当な増加量であり、昨日までソフトボール大だった巣が、翌日には一回り大きなバレーボールに近づいている、ということも起こり得るのです。次に、より深刻なのが「蜂の個体数」の増加です。女王蜂は、最盛期には一日に100個以上の卵を産み続けます。つまり、一日放置するということは、新たに100匹以上の「未来の兵士」が生まれることを許すのと同じ意味を持ちます。さらに、その日まさに羽化する直前の蛹が数十匹いれば、翌日には働き蜂の数が、目に見えて増えていることになります。そして、蜂の数が増えれば増えるほど、巣を守ろうとする防衛本能は強くなり、攻撃性も格段に高まります。昨日までは平気で通れた巣の下が、今日には蜂の警戒領域内となり、突然の攻撃を受ける危険なゾーンへと変わっている可能性があるのです。蜂の巣との戦いは、時間との戦いです。一日という時間は、蜂の帝国にとっては、戦力を増強し、要塞を固めるための、あまりにも貴重な時間なのです。